がん細胞スフェロイド・Tumoroid は、癌細胞や腫瘍組織から作製される3次元(3D)in vitroモデルです。これらの3Dがんモデルは、生体内で観察される複雑な腫瘍の生物学的特性や、細胞間相互作用の模倣により優れています。このため、免疫細胞製品候補の評価、或いは、固形腫瘍研究で急務とされる細胞免疫療法の前臨床開発において広く使用されています。Maestro Z は、3Dがんスフェロイドモデルの腫瘍の増殖と、免疫細胞による殺傷を正確に測定することが可能です。シンプルな操作で、感度の高いアッセイ結果が得られます。
固形腫瘍治療の課題
不均一性
- 腫瘍の不均一性により、免疫逃避を経た抗原が抵抗を獲得する可能性がある
免疫抑制
- 腫瘍微小環境(Tumor microenvironment, TME)が、免疫反応を回避または抑制するメカニズムを発達させる可能性がある
- PD-L1を発現した腫瘍が、PD-1経路を阻害する可能性がある
- TME内によく見られる免疫抑制サイトカイン:IL-10、TGFB、IL-4、IL35
浸潤
- 腫瘍の組成や構造により、腫瘍内へのT細胞輸送が妨げられることがある
がん細胞スフェロイドアッセイ
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3Dがんスフェロイドの増殖と、免疫細胞によるキリングの追跡>
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固形腫瘍モデルを用いた、免疫療法ポテンシーアッセイ>
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アプリケーションノート: 3D がん細胞スフェロイドを用いたCAR-T細胞ポテンシーアッセイ>
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アッセイの手順>
免疫療法の開発と改良において、細胞ポテンシーの正確な測定は不可欠です。CytoView-Z プレート 上に癌スフェロイドを播種し、Maestro Zを用いて非侵襲状態でその増殖を測定しました。リアルタイムの細胞増殖追跡により、治療薬候補のポテンシーををより正確に評価することが可能です。
A) CytoView-Zプレート上の、HER2発現卵巣癌細胞で構成された癌スフェロイド。B) 異なるサイズのスフェロイドの増殖を、50時間に渡り測定した。C) 24時間後、HER2標的CAR-T細胞を異なるエフェクター:ターゲット比で添加すると、スフェロイドのサイズが用量依存的に減少した。
腫瘍微小環境は、固形癌の特徴の1つです。腫瘍微小環境は、腫瘍とキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法など免疫療法との相互作用に、大きな影響を及ぼします。腫瘍学において、二次元(2D)細胞培養はハイスループット環境下での薬剤スクリーニングや毒性試験に不可欠なプラットフォームです。一方、3Dがんスフェロイドは、複雑な腫瘍生態により近い in vitro モデルとして多く使用されます。本事例では、Maestro Zを用いて、3D in vitroモデルと、2D単層培養でのCAR-T細胞によるキリングを比較しました。3D腫瘍モデルでは、HER-2特異的CAR-T細胞のポテンシーが低下することがわかりました。
CAR-T 細胞によるがんスフェロイド細胞傷害は、いずれのE:T比においても、単層培養に対する傷害より低く(A)、また、高いEC50を示した(B)。
アプリケーションノート:
3Dがん細胞スフェロイドモデルを用いたCAR-T細胞ポテンシーアッセイ
固形腫瘍に対する免疫細胞療法効果の評価は難しく、2D 単層培養ではその全容がわからないことがあります。本アプリーションノートでは、 in vitro 腫瘍モデルと Axion Maestro Z プラットフォームを用いて、簡単かつラベルフリー環境で細胞傷害を測定し、免疫療法研究を加速させる事例が紹介されています。
がん細胞を超低接着表面U底プレート上で4日間培養し、がんスフェロイドを作成します。その後、個々のスフェロイドをCytoView-Z プレート上の各ウェルに移します。1日後、CAR-T細胞懸濁液を異なるエフェクター:ターゲット (E:T) 比にて添加します。Maestro Zとインピーダンスモジュールソフトウエアを用いて、スフェロイドサイズの変化をラベルフリー且つリアルタイムで測定します。
詳細は以下のプロトコルをご覧ください。